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​染色体?DNA?遺伝子?

私たち人間の身体には約60兆個の細胞があるといわれています。

その細胞一つ一つの中に、核が1つ入っています。

​その核の中に入っているものが、染色体・DNA・遺伝子といったものになりますが、まずこの辺りが混乱する部分なので整理していきます。

核の中に入っているものはDNA(デオキシリボ核酸)で、通常はひも状になっていますが、細胞分裂の時には巻き取られて染色体という形になります。

染色体は核の中に複数個ありますが、普通2本で1組となり、またその数は生物種毎に決まっています。

ヒトの細胞の核には、23組、46本の染色体があります。そのうちの1組、2本の染色体を性染色体と言い、その人が女性になるか男性になるかを決めています。因みに女性はXX、男性はXYと表現されます。

染色体をほどいていくと、クロマチン繊維と呼ばれる細い

ひものようになっていて、このひもを更にほどいていくと、

ヒストンと呼ばれる特殊なたんぱく質に巻き付いた糸のようなものになります。

この糸のようなものをDNA(ディーエヌエー)と呼んでいます。(DNA:DeoxyriboNucleic Acid(デオキシリボ核酸))

DNAは、4種類の塩基と呼ばれる A(アデニン)、G(グアニン)、C(シ トシン)、T(チミン)が、互いに向き合って螺旋状になった図のような構造をしていて、 このA、G、C、Tのならびを塩基配列と呼び、人間の塩基対は約30億あることがわかっています。

 

遺伝子とは、DNAの中で、目の色や肌の色、ホルモンや酵素などのたんぱく質を作る設計図が書かれた部分のことをさしています。人間の遺伝子の数は約22,000ヶ所といわれDNAの中に点在しています。

これはDNA全体のわずか2%程度であり、当初、残りの98%は「ジャンク(がらくた)DNA」と考えられていました。しかし、研究が進むにつれ、がらくたと思われていた約98%の部分に重要な意味があることが分かってきたのです。

   ⇒ 遺伝子のイメージ映像は コチラ

遺伝子発現・・・Gene Expression

遺伝子発現という言葉を検索してみると

​ "遺伝子がもっている遺伝情報が、さまざまな生体機能をもつたんぱく質の合成を通じて具体的に現れること"     by デジタル大辞泉

 "遺伝情報がmRNAを経て,実際にタンパク質へと翻訳され,それが生体内で機能することを遺伝子が発現しているという"  by 生化学辞典 

このように紹介されています。

具体的に遺伝子発現とはどのようなことが起こっているのでしょうか?

まず、細胞の核の中に存在する遺伝子のなかで、ある刺激を受けて活性化(スイッチがONになった)した遺伝子がジッパーのように開いてそこに書いてある情報がコピー(転写)され、メッセンジャーRNA (mRNA)と呼ばれる一本のひも状の物質が作られます。

つぎに、このメッセンジャーRNAは核の外にあるリボソームと呼ばれる「タンパク質合成工場」に運ばれます。

そこでメッセンジャーRNAの情報が読み取られ、その配列に相当するタンパク質が作られる(翻訳)のです。

  ⇒ 遺伝子発現のイメージ映像は コチラ

ノンコーディングRNA・・・ncRNA

20世紀に考えられていた遺伝子発現においては,RNAはDNAとタンパク質を結ぶ仲介役としてのみ認識されてきました。しかし21世紀に入り、ヒトゲノム配列の解読、そしてそれに続く遺伝子発現の状態を計測するトランスクリプトーム解析によって、これまでタンパク質の発現に関係のない、全体の約98%を占める「ジャンク(がらくた)」と考えられていた DNA 領域から、多くの RNAが転写されていることが明らかになりました。

これらの、タンパク質の発現に関係のないRNAの総称をノンコーティングRNA(non-coding RNA : ncRNA) と呼んでいますが、実はこのノンコーディングRNAこそが生物種の複雑さや個性を決める重要な要素であることが分かってきたのです。

例えば、ヒトの遺伝子は約22,000個と書きましたが、線虫の遺伝子数は約20,000個、トウモロコシは約45,000個もの遺伝子があります。遺伝子の数がその生物の複雑さを決めるのであれば、あまりにもおかしな数字です。

つまり、遺伝子の数が重要なのではなく『遺伝子の発現がどのように制御されているか?』が重要で、この制御をするのが、ノンコーディングRNAだったのです。

ノンコーディングRNAには、タンパク質の翻訳工場であるリボソームを構成する リボソーム RNA(rRNA)、タンパク質の翻訳に必要なアミノ酸をリボソームに運ぶための 転移 RNA(tRNA)、RNA のプロセッシングに必要とされる small nuclear RNA (snRNA)、マイクロRNA(miRNA) 等が含まれています。

中でも、20 数塩基に切断された非常に小さな マイクロRNA(miRNA) は、遺伝子の発現や翻訳を制御することで、発生、細胞の増殖、分化、細胞死(アポトーシス)などに重要な役割を担っていると考えられており、いま最も注目されているノンコーティングRNAのひとつです。

  ⇒ ノンコーディングRNAの紹介映像は

       コチラ

マイクロRNA・・・miRNA

​DNAから転写されるRNAには、タンパク質を作る情報を持った(タンパク質をコードする)メッセンジャーRNA(mRNA)と、タンパク質を作る情報を持たない(タンパク質をコードしない)ノンコーディングRNA(ncRNA)があります。ncRNAのうち長さが21~23塩基のマイクロRNA(miRNA)は、生物工学に新たな見識を与えています。miRNAは比較的近年に発見され認識されたものであるにもかかわらず、遺伝子の転写後調節を行う最も重要な調節因子であると考えられています。また、種々の研究報告より、このマイクロRNAは広く動植物の細胞の中に存在し、ヒトだけでも2,000個ほど存在するのではないかとされておりこの数は年々増えており今後更に多くのマイクロRNAの存在が明らかになると思われます。更に、マイクロRNAは遺伝子の30%以上のものに対してその発現調節を行っていると予想されています。

これまで、健康の主役はタンパク質だと考えられていましたが、現在ではタンパク質の発現を制御するマイクロRNAこそが最も重要な主役ではないか、と考えられているのです。

 

創薬の分野では、複数のmiRNAががん化を促進または抑制する機能を持つことから、多くの研究者がmiRNAの発現異常と疾患との関係の解明に取り組んでいます。

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